融資の審査結果を待ちながらも、スタジオの準備を続けていました。すでに一度融資を断られている身。祈るような気持ちで毎日を過ごしていました。
資金のめどがつかない。けれども必要なものは買わなければいけない。残り少ない資金から毎日必要な備品を買い揃えていました。100円使うのもためらう日々・・・ある日、買出しに向かったホームセンターでお腹がすき過ぎて目が回ってしまいました。
『安くてカロリーのあるもの・・・』
普段なら避けるであろうジャンクフードも、このときばかりは食べざるを得ない状況でした。
必死な毎日は続きました。そして、融資の結果より早く最初のスタジオの内装工事は終了しました。
審査を待っている間は提出した見積もりにあるものは購入できません。エアコンが買えないままでした。
内装工事は終わりましたが、まだまだ作業は山盛り・・・昼間フィットネスクラブでの業務を終え、夜に自分の店に行き作業。時には深夜3時過ぎまで作業し、一旦家に戻り朝の8時にはまた自分の店で作業を始めていたりしました。
エアコンのない店。9月の終わり頃でしたが、夜はかなり寒くなっていました。照明もまだ少なく薄暗いスタジオ。急場しのぎの電気ストーブにあたりながら、コンビニの200円のわびしいお弁当。それが更に半額になったものを一人食べていました。
ふと襲ってくる絶望感・・・裕福ではなかったけど、何不自由なく暮らしてきた自分にとって初めて感じる孤独と絶望でした。
『本当にこれで正しかったのか・・・』
そんな思いが込み上げてきました。逃げ出せるなら逃げ出したいと何度思ったことか。
『もう引き返せない。引き返す道なんてない。』
店をやると決めた時点から、フィットネスクラブでの活動を減らしていました。弱い自分。退路を断っておかないと簡単に逃げてしまうことは分かっていました。
マンションの一室で隠れ家的に、そんなやり方もあったでしょう。でも私は、一階路面店にこだわりました。それも逃げ道をなくすためでした。
どんなに不安だろうが絶望しようが、もう引き返す道はない。自分でそんな状況を作り出していました。逃げ出さないため・・・
今思えばたいしたことではなったのですが、その時は本当に追い詰められました。当たり前の順番を間違ったこと。しかし、今思えばもし間違っていなかったら、逆に店はオープンしていなかったでしょう。
『お金借りられなかったからしょうがない。』
自分が逃げる”言い訳”を得て、あきらめてしまっていたでしょう。
薄暗く寒い自分のスタジオで、一人孤独と不安に耐えながらわびしい弁当を食べた経験は、自分に色々なことを教えてくれました。あの経験がなかったら今の自分はない。ないです。