採用基準

私が商売を始めた理由の一つは、”もうどこも自分など採用してくれないだろう”そんな考えがあったからでもあります。

年齢・実績・学歴・・・運よく採用してもらえても、まともな給料をもらえるようになるまでには数年はかかるだろうと思います。いや、もらえないかもしれません。

何より・・・私は面接が苦手です。

人前で話をすることが苦手なのですが、特に自分より年上の男性と話をするのは本当に苦手です。

多くの場合、企業の面接となると基本的には目上の男性と一度は話す必要があるでしょう。過去に数回受けましたが、結果は散々なものでした。

結局、アルバイトなどで生計を立て、いつしか独立してお店を構えるようになりました。

もともとは一人で営業していましたが、現在は2名のスタッフがいます。

もちろん面接をしました。一番初めに面接したときは自分で可笑しくなってしまいました。

『面接が受けられない自分が面接をしている。』

しかし、面白いもので立場が変わると色んなものが見えてきました。というより・・・

『ああ、なるほど。だから俺は面接に受からなかったんだ。』

自分が面接に落ちた理由がわかりました(笑)

残念ながら業界的な特徴もあるかもしれません。世間の常識とかけ離れた人も多く面接にやってきます。

面接時間を過ぎてから遅刻の連絡をくれる方

無断でキャンセルする方

また個人営業の小さな店ですから、滑り止めくらいの気持ちでいらっしゃる方もあります。『待遇がよかったら働いてやろう。』みたいな雰囲気の方もあります(苦笑)

大企業の面接となるとみなさん構えるでしょう。面接対策・応答の仕方などなど・・・ところが、小さい店のアルバイト採用となるとそこまでは対策しないでしょう。

大企業であれば人件費の予算も採用人数も、個人店のそれとは比べ物にならないでしょう。

その人を採用したからといって、人事担当者や直属の上司が直接その人にお給料を支払うわけではありません。予算という数字で責任を負うくらいでしょう。

私は面接する時にはいつも思います。

『この人を採用するということは、俺の給料を削ってでもこの人に給料を払うんだ。』

と。だから、本当に真剣に選びます。小さい店だからゆるい基準で雇ってくれるだろう?まさか。

小さい店の小さい予算です。だからこそ必死です。真剣に選びます。

問い合わせのメール・電話

返信のタイミング

履歴書から想像する人物像

今はインターネットの時代です。名前と少しの情報を入力すれば、たいていの場合その方の情報に辿り着きます。(怖い時代ですよね・・・)

テクニックで丁寧な対応をしているのか、本当に誠実な人なのか。ちょっとしたやり取りからでもわかります。

私の採用基準。それは・・・

『この人のためなら自分が苦労しても構わない。』

そう思わせてくれる人物。それだけです。

仕組み

右も左も分からず『お店を作ろう』そう思った私の手元にあったのは”カフェを開く人の本”でした。その当時はカフェに行くことすらなかったので、なぜカフェを開く人の本を持っていたのかはいまだに謎ですが(笑)

いわゆるハウツー本です。立地を決めましょう、メニューを決めましょう、お金を準備しましょう・・・など簡単に説明してある程度の内容でした。

そこに載っている、実際にカフェを開いた人達を見て『いいなぁ~俺もいつかこんなお店を・・・』と思っていました。

お店を作ろうと思ったら、あなたならどんなことを考えますか?

お店の名前?

どの辺りに?

こんな内装で?

こんなメニューで?

値段はこのくらいで?

こんな感じでしょうか。実際に私がこんな感じで考えていました。

前にお話した通り、開店当初は『パーソナルトレーニングなんて、まだまだこんな小さいお店では売れない』そう思っていたので、ストレッチ(リラクゼーションマッサージ)とヨガなどのレッスンが中心のお店にしようと思っていました。そこからパーソナルトレーニングもちょっとずつ、と。

結論からいうと失敗しました。

オープン当初、手作りの看板に<オープン記念 ヨガレッスン無料体験>なんてやっていましたから、すっかり”ヨガの店”と認知されてしまったんです。

実際にお店の中はというと、何もない空間だけがある状態。

ストレッチのお客様はほとんど来ませんでした。

看板に何が書いてあるのか

お店の中は何が(設備)あるのか

道行く人はそこをチェックして、”ああ、あのお店は〇〇屋さんなのね。”と認知するんだと思い知らされました。

それならばヨガとピラティスのレッスンを中心にしようと、レッスンの本数もインストラクターさんも増やしていきました。少しずつお客様は増えていきました。が・・・

結論からいうと失敗しました。(また・・・)

あとで分かったことですが、お店を作る時にまず考えなければいけない重要な事を私は考えていなかったんです。

最初のお店は40㎡ほどの小さいお店でした。レッスンの定員は6名に設定していました。そのくらいがストレスなく動ける限界の人数でした。

絶対とはいいませんが、この時点でグループレッスンを主体にお店をやったらうまくいかない事が私には見えていなかったんです。

なぜうまくいかないのでしょう?

例えばフィットネスクラブだと、月10000円前後でレッスンは受け放題です。ヨガスタジオなどだと、もう少し高いケースもあります。レッスンの本数も1日に6~9本くらいはあるでしょうか。スタジオは30~40人くらいは収容できます。

広い面積がある(収容人数が多い)から、多くのインストラクターさんを抱えて月10000円前後で運営することが出来るんです。お客様の数×単価が売上の基本ですから。

スタジオが小さいという時点で、価格を高めに設定しなければいけなくなるんです。

しかし、そう簡単にはいきません。特にヨガは。

提供しているところ(人)も多く、公民館などでは500円なんて価格設定で教えている人もあります。

高い給料をお支払いして人気のインストラクターさんを入れることも出来ませんから、レッスン単価を高く設定することも出来ませんでした。

スタジオは、豊富なインストラクター・豊富なレッスン(種類・本数)があることで魅力・競争力が生まれます。

そのためには、人的な初期投資(良質なインストラクターさんの確保)をするか、設備投資(広いスタジオ)をする必要があったんです。

私は・・・

レッスンスタジオという商売の仕組みを知らなかったんです

お店の雰囲気やメニュー、価格そういったもの以前に

<商売の仕組み> つまり <儲けの仕組み>

を考えなければいけなかったんです・・・

仕事とは何か?お金とは何か?

あなたにとって仕事とは何ですか?

あなたにとってお金とは何ですか?

パーソナルトレーナーとして個人事業主になった私は、所属していたフィットネスクラブの休館日以外は毎日活動していました。

一日の活動時間はほぼクラブの営業時間と同じくらいでしたので、お客様にはよく『なんだ?!お前ここに住んでるのか?』なんてからかわれました。

スタジオを開いてからは週休ゼロ日。木曜日の夜、フィットネスクラブでピラティスのレッスンを担当していたので、自分のスタジオの定休日をその日にし、レッスンまでが自分の休みでした。

もともと10時間以上活動するのが当たり前になっていましたが、スタジオをオープンさせるとその状況は加速。一日の半分以上の時間を働いていました。

夜お店のエアコンのスイッチを切ると今日の運転時間が表示されます。

「本日の運転時間 15時間」

ああ、今日も一日の大半をここで過ごしたか・・・なんて思いながら帰宅します。

今はお店から徒歩5分ほどのところに住んでいます。一週間のほとんどを半径1km圏内のエリアで過ごします。定休日に作業しようものなら、一ヶ月近く町内から出ないような時もあります。

自分でお店をやる方は、大なり小なりこんな感じだと思います。スタジオを作る前、居酒屋さんをやっている方にお話を聞いたら『休みは無し、早朝仕入れに行って昼から仕込み、深夜まで営業してるよ』とおっしゃってました。

その時は『よくそれでやってられるもんだなぁ・・・』と驚きました。自分だったら耐えられるのかな、と。

トレーナーになる前は、販売員やら皿洗いやらマッサージやら、いくつか仕事をしました。どれも楽しかったですし、どんな仕事からも学ぶことがありました。

そうはいっても普通にお給料を貰っていた時は、休みの日が待ち遠しかったです。

スタジオをオープンさせてしばらくすると、自分自身の仕事に対する考え方が変化していることに気付きました。

『このお店を無事に大きく育てなきゃ。』

いつしかお店を我が子のように思っていました。

お店は我が子

仕事は子育て

大変なのは確かなのですが、大事な我が子です。そこに時間や労力を費やすことは、なんら苦ではなくなりました。

販売員時代は毎朝『今日の売り上げ目標は〇〇円、前年は・・・』なんてやっていました。だからでしょうか、売上げの数字を上げたいという習性があります。

順調に大切な我が子が育っていくと、売上げが上がってきました。

『やった!初めて〇〇万円いった!』

では私の給料も増えるのかというと、実はまったく変わっていません。

自分の給料は必要最低限にしています。私よりアルバイトの方が給料が高いくらい(笑)

もちろん、我が子であるお店のために、そして現在はもう一人の我が子「従業員」のために残しておきたいのもあります。でも、それ以前に・・・

『あれ?!俺、売上げの数字を上げることにはこだわるけど、現金が欲しいんじゃないんだ。』

広い家に住みたいとか、車が欲しいとか、旅行がしたいとか。そんな欲があまりないことに気付きました。

売上げを上げるのと、現金が欲しいのとは私の中ではまったく違うことでした。

売上げを上げるのは、言い換えれば自分の商売に工夫を施して結果を出すということ。言い方は悪いですが、子供のころにやった魚釣りのようなイメージです。

仕掛けやエサを工夫して、お魚がいっぱいいそうなところに糸を垂らす・・・いわゆるマーケティングってやつに似てませんか??

そして、魚がたくさん釣れる。つまり自分の考えた作戦が当たり、商売がうまくいく。この瞬間が楽しいんです。

本当の釣りなら得られるのは魚ですが、この場合魚とは『売上げ=お金』です。私は釣った魚を食べたいわけでなく、自分の考えた仕掛けや作戦がうまくいくかどうか、その事にだけ興味があるようです。

魚釣りと違うのは、自分の仕掛けた作戦がうまくいくということは、誰かにお店の魅力を感じてもらえ、楽しく使ってもらえた事を意味します。

私にとって

自分の店は『我が子』

仕事は『魚釣りのような遊び(に近いもの)』

のようです。

たいして休みもなく、贅沢をするようなことがなくても、真剣に毎日遊んでいるようなものなので、あまり苦ではないらしいです。

「仕事の時間」「自由時間(遊ぶ時間)」という区別もなくなったので、『仕事=生きる事』になっています。

・・・もちろん、お休みは欲しいですが 笑

箱を持つということ③ 賭け

家や車は資産に計上されるものの、維持費や返済、税金といった出費が発生します。見方によっては負債です。持っていればお金が出ていきます。

お店を始めた場合はどうでしょう。当然のように初期投資もかかれば運営に関する費用もかかってきます。もちろん、その出費は家や車のローンとは比べ物にならないでしょう。(お店の大きさやスタッフ数などによって変わりますが。)

お店を始めて数ヶ月、それほど固定費もかからない商売でしたがそれでも赤字が続きました。ギリギリの予算で開業しましたから、毎月本当に銀行通帳を見るのが怖かった。

いつしか・・・赤字の額が減って、ようやくトントンというところまで。そしてついに黒字に。

少しずつ黒字の額が増えて、いつしかもとのフリーランス時代より収入が増えました。その時・・・

『これって、自分に賭けたってことだ。』

ふと思いました。お店を始める、小さくても事業を始める。これって自分に賭けたってことだと。

パチンコも競馬も、ギャンブルの類は一切やりません。宝くじだって買ったことがありません。臆病な性格ですから。にも関わらず、気付いたら(自分にとっては)大博打を打っていました。

お店を出す、それはコストがかかりリスクが増えると考える人は多いと思います。もちろん現実的にはそうでしょう。しかし・・・

家を買う、車を買う、ギャンブルにお金を使う。こうしたことに費やすお金は回収できません。(ギャンブル・宝くじは自分の力が及ばないところで結果が決定されますし、その仕組み上儲けが出る人はごくわずかです。)

では、お店を開く(事業を始める)のはどうでしょう。

現実には一年と持たないで閉店するお店も多いといわれます。でも、お金を回収できる(利益を産み出す)可能性はあります。そしてその可能性は、自分の頑張り・アイデア・工夫しだいで変わります。

リニューアルして店舗を拡大しました。一見必要がないくらい広い店舗になりました。

テナント料は倍近くなり、借入金も更に増えました。コストもリスクも高まりました。しかし・・・

ちょうどそのタイミングでお客様が一気に増えました。単にタイミングだったんだと思います。宣伝などはしていないので。でもその時思いました。

『お店にかかる費用はコストじゃない、投資だ。お店をよりよくしようとかける費用はコストじゃない。投資だ。』

当たり前と言えば当たり前です。設備投資ですから。でも、ついつい単純にコストと考えがちです。

でも、借入金も固定費もかなり増大しました。リスクはかなり高まったと言えます。けど・・・

『小さいままいたら、他の競合に負ける。』

どんな商売も競合がいます。協業なんて考え方もありますが、そうはいってもみな商売敵です。みんな自分の商売に必死ですから。情け容赦なんてしてくれません。どうしよう強い相手が出店してきたら。どうしよう・・・常に不安でした。でもある時・・・

『強い相手にビクビクしなくなるには、自分が強くなるしかない。』

リスクを恐れ立ち止まるほうが、よっぽどリスクが高まる気がしたんです。

私の判断が正しかったのか間違っていたのか。それは数年後にならないと分かりません。

けど、私は自分に賭けてみます。

箱=お店を持つということ② 家を買う勇気

『パーソナルトレーニングジムを開きます!』

最近では、SNSでもそんな投稿を時折見かけます。そこには・・・

すごいね!

勇気あるね!

頑張って!

そんな賞賛のコメントが寄せられたりします。

自分は相当な臆病者なので、それこそ死ぬ思いでお店を始めました。(今でもですが・・・)何から手を付けていいのかさえわからなかったので、本当に勇気・覚悟が必要でした。

でも・・・一階路面店、とはいえ小さい店舗。トレーニングマシンもない状態からスタートでしたから初期投資は300万円~400万円くらいだったと思います。当時の私にとっては大金でした。(もちろん、今でも大金ですが)

でも、でもです。

『事業』と考えた場合、この金額はかなり小さい額です。

300~500万円っていうと、ちょっとした高級車のお値段くらいでしょうか?

仮に誰かがそんな車を購入した、とSNSなどで発信したら・・・

すごいね!

勇気あるね!

頑張って!

そんな反応が返ってくるでしょうか?(すごいね、はありそうですが。)

使っているお金は一緒です。お店を始めたか、車を買ったか。でも、反応・印象はずいぶん違うものになると思います。

お店を始めることは、多くの人にとって非日常。でも、車を買うことは日常の出来事。そうしたことが反応の違いに表れるのだと思います。

お店を始めて6年。移転したり拡大したりしました。ついでに借入金も増えたわけですが、時々冷静に考えると『こんなに借金あるけど大丈夫かな??』って不安になるんです。けど待てよ・・・

『俺の借りてる額じゃ、家も買えないんだよな。』

私の年代(40代)なら住宅ローン真っ只中という方も多いと思います。私は良く知らないのですが35年ローンとかですよね。

今の私にとっては、お店を始めるより家を購入するほうがはるかに勇気が必要に思えるんです。35年・・・途方もない長さです。そもそも明日生きている保証なんてどこにもないのに。

家も車も資産に計上されます。でも・・・

家や車はお金を生み出すでしょうか?

税金、管理費、修繕費、返済・・・etc

ではお店は・・・?

お店の場合、頑張ればお金を生み出します

もちろん、家や車と同じように返済も税金も支払わなければなりません。でも・・・

お店は、自分自身の頑張り・アイデア・工夫によってその形を変え、発展していけるものです。

商売はそんなに簡単じゃない。それは今日まで苦しんだ自分には痛いほどわかりますし、まだその苦しみの真っ只中です。1年後大丈夫かな?来月大丈夫かな?いつも戦々恐々としています。でも・・・

明日どうなっているかわからない。それは、自分のお店で商売をしても、大きな会社に勤めても同じ。そのリスクは同じ。変わらないんです。

では、お店を出す費用は単純にコストなのでしょうか?