箱を持つということ③ 賭け

家や車は資産に計上されるものの、維持費や返済、税金といった出費が発生します。見方によっては負債です。持っていればお金が出ていきます。

お店を始めた場合はどうでしょう。当然のように初期投資もかかれば運営に関する費用もかかってきます。もちろん、その出費は家や車のローンとは比べ物にならないでしょう。(お店の大きさやスタッフ数などによって変わりますが。)

お店を始めて数ヶ月、それほど固定費もかからない商売でしたがそれでも赤字が続きました。ギリギリの予算で開業しましたから、毎月本当に銀行通帳を見るのが怖かった。

いつしか・・・赤字の額が減って、ようやくトントンというところまで。そしてついに黒字に。

少しずつ黒字の額が増えて、いつしかもとのフリーランス時代より収入が増えました。その時・・・

『これって、自分に賭けたってことだ。』

ふと思いました。お店を始める、小さくても事業を始める。これって自分に賭けたってことだと。

パチンコも競馬も、ギャンブルの類は一切やりません。宝くじだって買ったことがありません。臆病な性格ですから。にも関わらず、気付いたら(自分にとっては)大博打を打っていました。

お店を出す、それはコストがかかりリスクが増えると考える人は多いと思います。もちろん現実的にはそうでしょう。しかし・・・

家を買う、車を買う、ギャンブルにお金を使う。こうしたことに費やすお金は回収できません。(ギャンブル・宝くじは自分の力が及ばないところで結果が決定されますし、その仕組み上儲けが出る人はごくわずかです。)

では、お店を開く(事業を始める)のはどうでしょう。

現実には一年と持たないで閉店するお店も多いといわれます。でも、お金を回収できる(利益を産み出す)可能性はあります。そしてその可能性は、自分の頑張り・アイデア・工夫しだいで変わります。

リニューアルして店舗を拡大しました。一見必要がないくらい広い店舗になりました。

テナント料は倍近くなり、借入金も更に増えました。コストもリスクも高まりました。しかし・・・

ちょうどそのタイミングでお客様が一気に増えました。単にタイミングだったんだと思います。宣伝などはしていないので。でもその時思いました。

『お店にかかる費用はコストじゃない、投資だ。お店をよりよくしようとかける費用はコストじゃない。投資だ。』

当たり前と言えば当たり前です。設備投資ですから。でも、ついつい単純にコストと考えがちです。

でも、借入金も固定費もかなり増大しました。リスクはかなり高まったと言えます。けど・・・

『小さいままいたら、他の競合に負ける。』

どんな商売も競合がいます。協業なんて考え方もありますが、そうはいってもみな商売敵です。みんな自分の商売に必死ですから。情け容赦なんてしてくれません。どうしよう強い相手が出店してきたら。どうしよう・・・常に不安でした。でもある時・・・

『強い相手にビクビクしなくなるには、自分が強くなるしかない。』

リスクを恐れ立ち止まるほうが、よっぽどリスクが高まる気がしたんです。

私の判断が正しかったのか間違っていたのか。それは数年後にならないと分かりません。

けど、私は自分に賭けてみます。

箱=お店を持つということ② 家を買う勇気

『パーソナルトレーニングジムを開きます!』

最近では、SNSでもそんな投稿を時折見かけます。そこには・・・

すごいね!

勇気あるね!

頑張って!

そんな賞賛のコメントが寄せられたりします。

自分は相当な臆病者なので、それこそ死ぬ思いでお店を始めました。(今でもですが・・・)何から手を付けていいのかさえわからなかったので、本当に勇気・覚悟が必要でした。

でも・・・一階路面店、とはいえ小さい店舗。トレーニングマシンもない状態からスタートでしたから初期投資は300万円~400万円くらいだったと思います。当時の私にとっては大金でした。(もちろん、今でも大金ですが)

でも、でもです。

『事業』と考えた場合、この金額はかなり小さい額です。

300~500万円っていうと、ちょっとした高級車のお値段くらいでしょうか?

仮に誰かがそんな車を購入した、とSNSなどで発信したら・・・

すごいね!

勇気あるね!

頑張って!

そんな反応が返ってくるでしょうか?(すごいね、はありそうですが。)

使っているお金は一緒です。お店を始めたか、車を買ったか。でも、反応・印象はずいぶん違うものになると思います。

お店を始めることは、多くの人にとって非日常。でも、車を買うことは日常の出来事。そうしたことが反応の違いに表れるのだと思います。

お店を始めて6年。移転したり拡大したりしました。ついでに借入金も増えたわけですが、時々冷静に考えると『こんなに借金あるけど大丈夫かな??』って不安になるんです。けど待てよ・・・

『俺の借りてる額じゃ、家も買えないんだよな。』

私の年代(40代)なら住宅ローン真っ只中という方も多いと思います。私は良く知らないのですが35年ローンとかですよね。

今の私にとっては、お店を始めるより家を購入するほうがはるかに勇気が必要に思えるんです。35年・・・途方もない長さです。そもそも明日生きている保証なんてどこにもないのに。

家も車も資産に計上されます。でも・・・

家や車はお金を生み出すでしょうか?

税金、管理費、修繕費、返済・・・etc

ではお店は・・・?

お店の場合、頑張ればお金を生み出します

もちろん、家や車と同じように返済も税金も支払わなければなりません。でも・・・

お店は、自分自身の頑張り・アイデア・工夫によってその形を変え、発展していけるものです。

商売はそんなに簡単じゃない。それは今日まで苦しんだ自分には痛いほどわかりますし、まだその苦しみの真っ只中です。1年後大丈夫かな?来月大丈夫かな?いつも戦々恐々としています。でも・・・

明日どうなっているかわからない。それは、自分のお店で商売をしても、大きな会社に勤めても同じ。そのリスクは同じ。変わらないんです。

では、お店を出す費用は単純にコストなのでしょうか?

箱=お店を持つということ① 箱はちから

整体屋さんは誰でもなれるんですよ。そういうとあなたはびっくりするでしょうか?

整体屋さんは接骨院と違って国家資格(接骨院の場合は柔道整復士)が必要な商売ではないので、極端な話あなたが『明日から整体師になろう!』といえばなれるんです。(それがいいかどうかは別として、ですよ。)

パーソナルトレーナーもこれと同じで、税務署に行って開業届けを出せば手続きは完了です。はい、明日からパーソナルトレーナーを名乗れます。(しつこいようですが、それがいいかどうかは別として、ですよ!笑)

個人事業主(フリー)のパーソナルトレーナーとしてフィットネスクラブで活動していた時と、自分のスタジオを作った時。ある違いを感じました。それは・・・

『箱は力(ちから)だ。』

ということでした。

今も当時も変わらず、私は無名などこにでもよくいるパーソナルトレーナーです。どこかの協会のマスタートレーナーでもないですし、凄腕・神技のカリスマトレーナーでもありません。

人付き合いが特別良いわけでもないので、いわゆる横のつながりなんてのもあまりありません。”パーソナルトレーナー”としての私に会いにくる、なんて人は皆無でした 笑

ところが・・・

箱、お店を構えるとちょっと状況は変わりました。

小さい小さいお店。お洒落な街にあるわけでも、カリスマトレーナーのお店でもありません。それでも・・・

・世界的に活躍するダンサーさん

・海外のマスタートレーナーさん

・国内の有名トレーナーさん

・名門バレエ団のピラティストレーナーさん

などなど・・・

いろんな方にお会いする機会を得ました。もし、私がただの一個人パーソナルトレーナーだったら、到底お会いできないような方々ばかりでした。それもこれも、小さくても『箱(お店)』を持ったからこそでした。それも、マンションの一室などではなく、小さくても1階路面店だったからだと思います。

『すごいなぁ・・・箱って力を持ってるんだ。』

実は以前、超有名な私もあこがれるトレーナーさんのセミナーに参加したとき、その方も全く同じ事をおっしゃってました。箱は力があるんだ、と。

小さいところでいえば、広告などの営業マンがやってくるのだって箱があればこそ、なんです。

ところで、お店を始めるのは車を買うより勇気が『要らない』と最近思うようになりました。なぜ???不思議に思いますか??

灯り|ジム・スタジオが出来るまで⑥

お客様は『箱』につくもの。

マッサージや美容院など、指名・担当などがある仕事でよく言われます、お客様は箱つまり店についているんだと。

とかく、自分の担当しているお客様は自分についてきてくれているんだ、と思いがち。『きっとついてきてくれるだろう。』そう思って独立して痛い目を見た、という話はよく聞きます。

『ゼロから頑張ろう。』

そう覚悟してお店をオープンしました。そう覚悟していました。それでも・・・

一日誰とも話さない。一週間ほとんど仕事がない。

フィットネスクラブでは自分の担当しているお客様も多く、施設はいつも会員さんで賑やか。それが一変しました。少し薄暗い店内に、毎日一人ポツンと座っていました。

『どうしよう・・・』

こんなに自信を打ち砕かれたのは人生で初めてでした。フィットネスクラブ時代、セッション数は店舗でも1番か2番。それがこの有様。プライドなんてあっさりへし折られていました。

毎日色々な事を考えました。色々な事を試しました。まさに”命がけ”の気分でした。

そんなある日、フィットネスクラブ時代お世話になったお客様が遊びにいらしてくださいました。嬉しい反面、今の状況を知られるのは少し辛かったです。

開店のお祝いや近況をお話しているうちに、お客様がふと・・・

『誰も来ないですね。電話一つ鳴らない。』

心をえぐられるような一言でした。

『ええ、でも私はここにいます。ここにいるしかないんです。』

とっさに私の口から出た言葉に、お客様は驚かれたそうです。

のちにお聞きすると、フィットネスクラブ時代多くのお客様に囲まれていた私の印象しかなかったので、開店したお店もすぐにお客様で賑わっているのを予想されたのだそうです。ところが、あまりにさびしい状況を見て心配で思わずそうおっしゃったのだそうです。

あまりにさびしい状況。それなのに迷いもせず『ここにいるしかない』そう私が言い切ったことにびっくりしたそうです。もう逃げ場はない。ここで頑張るしかない。自信もプライドも無くしながら、それでも自分は覚悟していたんだと思います。

もし自分がこのお店からいなくなれば、お店に ”灯り” がともらない。暗く人もいない、そんなお店には誰も来ないだろう。そう思った自分はチラシさえ配りにいかず、ひたすら待ち続けました。

『誰かがお店の事を聞きたいとやってきてくれたのに、誰もいなかったら申し訳ない。』

ひたすら・・・ひたすら待っていました。

お金について③ なぜ稼ぐのか

自身の店舗(StudioRe庵)をオープンさせました。当たり前ですが、オープン当初はお客さんは数えるほどでした。フィットネスクラブでフリーのトレーナーとして活動していたときは、平均月80セッション。月収は30万円前後でした。フィットネスクラブですから自分のクライアントの方以外も会員さんがたくさんいて、いつも賑やかでした。それが・・・

誰も来ない。電話もならない。一日誰とも話さずに帰宅することも珍しくなかったです。一週間のセッション件数も数えるほどでした。

もともと一人で過ごすのが好きな私ですが、さすがにこの時ばかりは凹みました。忙しいはずの後輩トレーナーが私を心配してちょこちょこ遊びに来てくれていましたが、のちに『あの頃いつ見てもしぼんだ風船みたいになってましたよ。』と言ったくらいです。

三ヶ月が過ぎ、半年が過ぎ、ついに一年が過ぎる頃・・・売上げが徐々に伸び、ついにフリーのトレーナー時代の収入を超えるようになりました。

『よかった。でもいつどうなるかわからない。』

経費を除いて残ったお金はほとんど使わず、お店の資金として貯めていきました。

しばらくすると、パーソナルトレーニングが世間的にも認知され始め、さらにお客さんが増えてきました。比例して、お店の資金も貯まっていきました。

毎月憂鬱だったテナント料の振込みの日。それが徐々に憂鬱さが減り、次第に少し楽しみになるようになりました。

『よかった。貯金がふえた。』

少しずつ増えていくお店の資金。安心から楽しみになっていきました。しかしある日・・・

『俺なにやってるんだろう?』

預金通帳を見て喜んでいる自分・・・

『俺は何を喜んでいるんだ。こんなことをしたくて店を始めたのか?!』

お店を出したのは自分の貯金を貯めるためじゃない。お客さんに喜んでもらうためじゃないか。そう気付きました。

『これはお客さんから預かったお金。お客さんのために使うお金じゃないか。』

不安のあまりお金を残すことばかり考えていました。お店、大きく言えば事業で得たお金はお給料としてもらっているお金とは違う。お客様からいただいたお金は預かりもの。お客様によりよいサービスという形でお返ししなければいけないんだ。そう気付きました。

笑顔でお客様がお金を支払ってくださるサービスを提供する

そのお金でまた 新しい・よりよいサービスを提供する

そしてまた 笑顔とお金を交換する

それが商売の原点・あるべき姿なんだと、ようやく気付きました。