『あ、このトレーニングはここがポイントです。ここをこうすると効いてくるでしょ?よかったらパーソナルトレーニングやりませんか?今ならちょっと割引で・・・』
もしあなたがフィットネスクラブに通っていたら、こんな風にトレーナーに話しかけられたことはないでしょうか?
フィットネスクラブ時代、こんな調子で営業をしたりチラシを配ったりするトレーナーがいました。もちろん私も最初はそうでした。でもある時・・・
『トレーナーさんに話し聞くとお金取られるんでしょ?』
とお客様から冗談っぽく言われました。
あなたがフィットネスクラブでトレーニングしていると想像してください。突然見知らぬトレーナーが寄ってきて親切にアドバイスしてくれました。しかし最後に・・・
『じゃあ、パーソナルトレーニングやりませんか?もっと効果が出ますよ!』
なんて営業が始まったら、なんだ親切じゃなくて押し売りか、って気になりませんか?
私は元はスポーツ用品の販売員でした。セールスすることには慣れていたので、私も始めはそうした営業をしていました。でも・・・
『これじゃお客様からしたら親切の押し売りじゃないか。』
そう感じて以来、営業(売り込み)をしないと決めました。お客様は週に何回もフィットネスクラブにいらっしゃる。何をするため?もちろん運動をするためです。それなのにクラブに来るたびに私たちの営業トークを聞かされたら・・・邪魔くさくてしかたないだろう、と。
『もう自分はモノ売りじゃない。今日から営業はしない。』
そう決めました。そんなことしたら売り上げ下がるんじゃ・・・あなたはそう思いますか?
自慢出来るような話ではないのですが、私の売り上げは所属したジムの中ではいつも1・2番でした。カリスマトレーナーかって?いいえ(笑)私はどこにでもいるトレーナーです。プロ選手やモデルを担当したなんてこともありません。
売り込まないで売る。そんなテクニック本やセミナーもありますね。くだらないので見たことも参加したこともありませんが(笑)
私がやっていたのは、ごく当たり前のことばかりでした。
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お客様に笑顔で挨拶をする
いつもクラブにいる
お客様を観察し、必要なアドバイス・サポートをする
お客様が必要とする知識を学ぶ
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当時(今もそうかもしれませんが)、フリーランスのトレーナーは何店舗も掛け持ちで活動していることが多かったんです。この時間帯はお客様が少ないから移動して別の店舗で・・・といった具合で、仕事の効率化を図っていた。
でも、そうするとトレーナーがいない時間帯が出来るんです。私は始めはトレーナー兼クラブスタッフだったので、活動時間に制約がありました。なので、せっかくお客様がパーソナルトレーニングを希望されても『すみません。今トレーナーがいないので・・・』と言わざるを得ないことが多々ありました。
これは販売員だった私としては、口が裂けても言いたくない言葉でした。お客様が欲しがっているのに売れない。しかも、自分という”商品”はここにあるのに。なんて申し訳ない・・・何度も悔しい思いをしていました。その時から決めていました。
『俺がフリーランスのトレーナーになったら、トレーナーのいない時間は作らないぞ。』
フィットネスクラブは15時~18時くらいがもっとも会員さんが少なくなります。当然トレーナーもいなくなります。私はひたすら自分の所属店舗にとどまりました。(まあ、地方出身で電車移動が苦手だったのもあるのですが 笑)
そのうちに・・・
『近藤さんはいつ来てもいるね。ここ(クラブ)に住んでるの?』
なんてからかわれるようになりました。
フリーランスのトレーナーは、箱(店舗)という実態はないのですが、一人ひとりが店舗なんだと思うんです。ところが、そういう感覚の人は少なかったように感じます。
先にあげた私の行動。実は、普通にお店を開いていたら当たり前のことばかりです。
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お客様に笑顔で挨拶をする
→ 説明不要ですよね。当たり前のこと。
いつもクラブにいる
→ そこに”店”がなかったらお客さん来ません、買えません(笑)
お客様を観察し、必要なアドバイス・サポートをする
→ 上手な接客は親切。下手な接客は迷惑。セールスばかりされたら安心してお店にいけませんよね。
お客様に必要な知識を学ぶ
→ お客様の欲しがる商品を仕入れる。
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普通にお店を開いたら、当たり前のことばかり。なのに、形態が違うから見えなくなってしまうんです。ある時、トレーナー陣が売り上げが悪いと悩んで、事務所で作戦会議ばかり開いていたことがありました。私も何度か参加させられました。でも、内心・・・
『売り上げ上げたきゃ、お客さんに挨拶して回ってきたらいいのに。』
と思ってました。他のトレーナーは私がイベントやキャンペーンなどに協力せず、無策でいることにイライラしたようでした。でも、私は決して無策ではなった。その当時はそうとは意識していませんでしたが、結果として目に見えない策を張り巡らしていました。
『お客様にとってコンビニエント(便利)であること。』
そこに商品がなければ売れませんよね。
同じ商品なら笑顔の人から買いたいですよね。
高額な商品なら顔や仕事ぶりを知っている人から買いたいですよね。
自分の欲しい商品のあるお店で買いたいですよね。
笑顔で、セールスせず、気軽にいつでもちょっと相談が出来る・・・自分はそんな”店”になろうとしていました。